全身をトレーニングしていても、ついつい見落としがちになってしまう部位が出てきます。前腕部もその一つです。
限られたトレーニング時間の中で、前腕部を積極的に鍛えている人はそう多くはいないでしょう。
トレーニングメニューの中に前腕をメインに鍛えるエクササイズが一つも入っていない…なんて珍しい事ではありません。
確かに前腕は他の部位を鍛えていれば自然と筋力がついてくるものです。しかし、前腕をメインに鍛えるエクササイズが必要無い訳ではありません。
なぜなら、前腕を鍛えることで様々なメリットを得ることができるからです。
今回は、前腕部の筋肉の名称や働き、前腕を鍛えるためのトレーニングなど一挙にまとめて紹介していきます。
この記事の目次
見落としがちな部位でもあるが、筋トレにも見た目にも欠かせない“前腕部”
前腕部を鍛えることで、どのようなメリットがあるのでしょうか。
大筋群を鍛えるのに重要
皆さんが思っている以上に前腕部の筋力は重要です。特に前腕部を鍛えることによって向上する握力は、背中や腕の筋肉を鍛える時などのプル系の種目で活躍します。
バーベルやダンベルを扱う際に、握力があることによって高重量を扱うことができるようになります。
デッドリフトやベントオーバーロウ、バーベルアームカールなどで前腕が疲労してしまって、背中や腕が効く前に動作ができなくなってしまうという人は、積極的に前腕を鍛え握力を高めましょう。
シャツから見える男らしさ
シャツなどを腕まくりした際にチラッと見える太く筋肉質な前腕は、男らしさをアピールできるポイントの一つです。
重い物を持った時や物を引っ張るときなど、グッと力を入れた時にでてくる筋肉の隆起は普段からトレーニングをしていることを周囲に知らしめ力強い印象を与えます。
魅力的な前腕はただ太いだけでなく、“盛り上がった筋肉”や“浮き出た血管”が必要です。そのためにも他の部位同様、筋トレによって筋肥大させ無駄な脂肪は減らしておく必要があります。
スポーツ競技にも欠かせない握力
バットやラケット、ボールなど物を持って行うスポーツ競技の場合、握力によって競技パフォーマンスが左右される場合があります。
前腕が疲労し握力がなくなってしまうことでパフォーマンスが低下し、負けてしまうということも少なくありません。
その為、アスリートはトレーニングメニューの中に前腕部のトレーニングを組み込んでおきたいところです。
前腕のトレーニングを行うことで肘や手首の関節を強化することにも繋がり、障害予防という観点からもメリットがあります。
日常生活でも活躍できる
重い荷物やたくさんの買い物袋を手に持って運ぶとき、活躍するのが前腕の筋肉です。前腕を鍛えておけば女性の重い荷物だって楽々持ってあげる事ができます。
その他にも、ビンのふたを開ける、タオルを絞るなど前腕を鍛えることで活躍する場面は日常生活中で頻繁に発生します。
前腕を鍛えておけばそれらすべてがアピールポイントになるのです。
前腕を構成する主な筋肉
前腕は数多くの筋肉で構成されています。いくつもの筋肉がお互いに力を発揮し合って、指先や手首の複雑で細かい動きを可能としているのです。
ここでは前腕部の代表的な筋肉とその働きを紹介します。
橈側手根屈筋(とうそくしゅこんくっきん)
参考:https://muscle-guide.info/flexorcarpiradialis.html
手首を曲げる(屈曲)働きを持つ筋肉の中で、代表的なのが「橈側手根屈筋」です。
親指側にある橈骨手根屈筋は、小指側にある「尺側手根屈筋」などとともに力を発揮しますが、屈筋群の中で最も発揮する力が強い筋肉です。
長橈側手根伸筋(ちょうとうそくしゅこんしんきん)
参考:https://muscle-guide.info/extensorcarpiradialislongus.html
手首を伸ばす(伸展)働きを持つ伸筋群の中で、代表的なのが「長橈側手根伸筋」です。
「短橈側手根伸筋」、「尺側手根伸筋」などとともに手首を反らせるような動作で大きな力を発揮します。
深指屈筋(しんしくっきん)・浅指屈筋(せんしくっきん)
参考:https://muscle-guide.info/flexordigitorumprofundus.html
参考:https://muscle-guide.info/flexordigitorumsuperficialis.html
握力に関係する代表的な筋肉が「深指屈筋」・「浅指屈筋」です。
指を曲げていく際に力を発揮するこれらの筋肉は、親指を曲げる筋肉「長母指屈筋」などとともに鍛えることで握力を高めることができます。
腕橈骨筋(わんとうこつきん)
参考:https://muscle-guide.info/brachioradialis.html
前腕部にありながら手首の動きにはあまり関係せず、肘の屈曲などの働きを持つのが「腕橈骨筋」です。
上腕二頭筋を鍛えるエクササイズを行うことで鍛えることができます。
前腕を鍛えるエクササイズの種類・フォームの解説
ここでは前腕を鍛えるためのエクササイズを紹介していきます。
バーベルリストカール
バーベルを使って屈筋群を鍛える前腕部の代表的なエクササイズです。
-やり方の概要
1.ベンチに座り、太ももの上に肘と前腕をのせ腕を固定します。手のひらを天井側に向け両手でバーベル(もしくはEZバー)を握りましょう。
太ももの上では安定性が悪いと感じる人は、ベンチに前腕部をのせ、手首から先をベンチの外に出すようにすると腕を固定しやすくなります。
2.バーベルを指にひっかけるようにできるだけ下したところから、前腕部を動かさないように固定したまま、手首を曲げていきます。
3.持ち上げられるところまで上げたら、ゆっくりと元に戻していきます。
4.この動作を繰り返し行います。
-効果のある筋肉・部位
橈側手根屈筋・尺側手根屈筋などの屈筋群
-気を付けること、ケガ防止のために
バーベルを動かす際に、手首を動かすだけでなく指も動かすようにすることで可動域が大きくなり負荷が増します。
また、指の屈筋も同時に鍛えることができるので握力向上にもつながります。
バーベルを下す時は指に引っかかるくらいまで下ろし、持ち上げる際は指→手首の順に持ち上げていくようなイメージで動作を行いましょう。
握力がなくなりキツくなってくるエクササイズ終盤は、握力がなくてもできる手首だけの動作でしっかり前腕部を追い込みましょう。
-参考動画
バーベルリバースリストカール
バーベルを使って前腕部の伸筋群を鍛えるエクササイズです。
-やり方の概要
1.ベンチに座り、太ももの上に肘と前腕をのせ腕を固定します。手のひらを床に向け両手でバーベル(もしくはEZバー)を握りましょう。
バーベルリストカール同様、ベンチで腕を固定しながら行うこともできます。
2.バーベルをできるだけ下したところから、前腕部を動かさないように固定したまま、手首を反らせるように持ち上げていきます。
3.持ち上げられるところまで上げたら、ゆっくりと元に戻していきます。
4.この動作を繰り返し行います。
-効果のある筋肉・部位
長橈側手根伸筋・短橈側手根伸筋・尺側手根伸筋などの伸筋群
-気を付けること、ケガ防止のために
リストカール同様、関節可動域をフルに動かすことによって効果が高まります。
ストレートシャフトのバーベルで動作がしにくかったり手首にストレスがかかる感じがするようであれば、手首に負担の少ないEZバーを活用して行いましょう。
バーベルリストカールよりも扱える重量が少なくなりますので、重量設定には注意しましょう。
-参考動画
バーベルホールド
バーベルを持ち握力を鍛えるエクササイズです。
-やり方の概要
1.パワーラックのセーフティーバーなどを持ち上げやすい高さに調整し、バーベルを設置します。バーベルは両手で握ります。
2.バーベルを持ち上げ、そのまま保持します。
3.握力が続く限り保持します。握力がなくなったら下しましょう。
4.この動作を繰り返し行います。
-効果のある筋肉・部位
深指屈筋・浅指屈筋・長母指屈筋など
-気を付けること、ケガ防止のために
バーベルを持つだけという簡単なエクササイズです。
ただ、握力を鍛えるためには重い重量を扱う必要があります。そのため、パワーラックやベンチプレス台などを使って、バーベルを持ち上げやすいようにして行うようにしましょう。
-参考動画
ダンベルリストカール
ダンベルを使って前腕部の屈筋群を鍛えるエクササイズです。
-やり方の概要
1.ベンチに肘と前腕をのせ、腕を固定します。手のひらを天井側に向け両手でダンベルを握りましょう。
2.ダンベルを指にひっかけるようにできるだけ下したところから、前腕部を動かさないように固定したまま、手首を曲げていきます。
3.持ち上げられるところまで上げたら、ゆっくりと元に戻していきます。
4.この動作を繰り返し行います。
-効果のある筋肉・部位
橈側手根屈筋・尺側手根屈筋などの屈筋群
-気を付けること、ケガ防止のために
バーベルに比べ取り回しが楽なため、関節可動域を大きくとりやすくなります。
両腕同時に動作することで不安定性があるようであれば、片腕ずつ動作を行い反対側の手で前腕部を抑えるようにして行うと腕も安定するうえ、前腕を意識しやすくなり効果が高まります。
-参考動画
ダンベルリバースリストカール
ダンベルを使って前腕部の伸筋群を鍛えるエクササイズです。
-やり方の概要
1.ベンチに肘と前腕をのせ、腕を固定します。手のひらを床に向け両手でダンベルを握りましょう。
2.ダンベルをできるだけ下したところから、前腕部を動かさないように固定したまま、手首を反らせるように持ち上げていきます。
3.持ち上げられるところまで上げたら、ゆっくりと元に戻していきます。
4.この動作を繰り返し行います。
-効果のある筋肉・部位
長橈側手根伸筋・短橈側手根伸筋・尺側手根伸筋などの伸筋群
-気を付けること、ケガ防止のために
動作に慣れていないと、小指よりも親指側が高くなり手首が回旋(回外)しながら持ち上げてしまうことがあります。
力が逃げてしまい刺激量が少なくなってしまうので、動作中は手首が回旋しないようにしっかり真上に持ち上げるようにしましょう。
また、ダンベルを下している時は動作スピードをコントロールするようにゆっくりと下していくようにしましょう。
-参考動画
スピネーション
前腕部を回旋させる筋肉を鍛えるエクササイズです。
– やり方の概要
1.ベンチに肘と前腕をのせ腕を固定したら、手のひらを床に向け片手でダンベルを握ります。この時、ダンベルのグリップの中心を持たず、小指側にぴったり寄せて持つようにしましょう。
2.ダンベルを親指側が下になるようにできるだけ傾けたところから、肘を動かさないように固定したまま、ダンベルを垂直に立てるように前腕を捻ってダンベルを持ち上げていきます。
3.ダンベルが垂直になるところまで上げたら、ゆっくりと元に戻していきます。
4.この動作を繰り返し行います。反対側の腕も同様に行いましょう。
– 効果のある筋肉・部位
長橈側手根伸筋・短橈側手根伸筋・尺側手根伸筋などの伸筋群
– 気を付けること、ケガ防止のために
重いダンベルを扱うことができないエクササイズです。低負荷でよいのでしっかり肘を固定し、動作をコントロールしながら行いましょう。
ダンベルの端を持つことで強度を高めることができます。持てるようであれば、参考動画のようにグリップよりも外側のウエイト部分を握って行うとよいでしょう。
– 参考動画
プロネーション
前腕部を回旋させる筋肉を鍛えるエクササイズです。スピネーションと逆の動きを鍛えます。
– やり方の概要
1.ベンチに肘と前腕をのせ腕を固定したら、手のひらを天井側に向け片手でダンベルを握ります。この時、ダンベルのグリップの中心を持たず、小指側にぴったり寄せて持つようにしましょう。
2.ダンベルを親指側が下になるようにできるだけ傾けたところから、肘を動かさないように固定したまま、ダンベルを垂直に立てるように前腕を捻ってダンベルを持ち上げていきます。
3.ダンベルが垂直になるところまで上げたら、ゆっくりと元に戻していきます。
4.この動作を繰り返し行います。反対側の腕も同様に行いましょう。
– 効果のある筋肉・部位
橈側手根屈筋・尺側手根屈筋などの屈筋群
– 気を付けること、ケガ防止のために
スピネーション同様、しっかり動作をコントロールしながらゆっくり行いましょう。
スピネーションの動作と繋げて行うことができます。別々に鍛えるよりも一連の動作としてスピネーションとプロネーションの動作を行うことで効率よく鍛えることができます。
– 参考動画
ハンドグリップ
皆さんご存知、握力を高めるためのエクササイズです。
-やり方の概要
1.片手でハンドグリップを握ります。
2.しっかりハンドグリップが閉じるまで握りこみます。
3.閉じるまで握りこんだら、ゆっくりと手を広げて元に戻していきます。
4.この動作を繰り返し行います。反対側も同様に行います。
-効果のある筋肉・部位
深指屈筋・浅指屈筋・長母指屈筋など
-気を付けること、ケガ防止のために
握力を鍛える代表的なエクササイズです。
握力の向上を目指すのであれば、他の部位同様負荷設定が重要です。
軽い負荷のものから低~中回数程度しかできない高い負荷のものまでいくつかハンドグリップを用意すると効果的です。
またハンドグリップは、できるだけ手が広がるようなものを選ぶと可動域を大きく使えるため負荷が高まります。
-参考動画
リストローラー
前腕用の器具を使ったエクササイズです。
-やり方の概要
1.リストローラーのグリップを両手で握ります。肘を伸ばし、肩の高さまで両腕を持ち上げます。
2.左右交互にグリップを捻り、ウエイトを上まで持ち上げていきます。
3.持ち上げられるところまで上げたら、ゆっくりと元に戻していきます。
4.この動作を繰り返し行います。
-効果のある筋肉・部位
橈側手根屈筋・尺側手根屈筋などの屈筋群
-気を付けること、ケガ防止のために
初めのうちは動作が難しく、肩を挙げてしまうなど反動を使ってしまうことが多い種目です。
しっかり前腕に効くようにその他の部位を動かさずに手首を捻る動作を行いましょう。
肩の高さで腕を保持するのがつらい人は、リストカールのように高い位置で前腕を固定した状態で行うとよいでしょう。
-参考動画
ハンマーカール
上腕部を鍛えるエクササイズですが、前腕部も刺激することができます。
– やり方の概要
1.両手にそれぞれダンベルを持ちます。ダンベルを持った両手は、手のひらがカラダを向くように内側に向けましょう。この時、グリップの中心より上側を持つと、動作が行いやすくなります。
2.背筋をまっすぐ伸ばし、頭の位置を固定します。脚は膝を軽く曲げ、肩幅程度に広げておきましょう。
3.肘をカラダより少し前に出し固定したまま、ダンベルを持ち上げていきます。
4.しっかりと肘を曲げきったら、ゆっくりと元の位置に戻していきます。動作中、肘の位置が動かないように固定しながら行いましょう。
5.この動作を繰り返し行います。
– 効果のある筋肉・部位
腕橈骨筋 上腕二頭筋
– 気を付けること、ケガ防止のために
手首の動作はありませんが、上腕二頭筋をサポートする働きを持つ腕橈骨筋を鍛えるのに適したエクササイズです。
反動を使わず動作スピードをコントロールして行いましょう。
– 参考動画
前腕を鍛えるためのポイント
ここでは前腕を効果的に鍛えるためのポイントを解説していきます。
高重量を扱うよりも、低重量でしっかり筋肉を意識しながら
前腕にある筋肉は他の部位に比べ、小さい筋肉ばかりです。そのため高重量を扱うと肘や手首に大きなストレスがかかり、関節を傷めてしまう場合があります。
また、前腕部のエクササイズをトレーニング序盤に行ってしまうと、筋疲労によってグリップ力が低下し、その他の部位のエクササイズに大きく影響してしまいます。
そのため高重量でのトレーニングはあまり適していません。
他の部位のエクササイズ中にも前腕は使われているので、前腕部のエクササイズはトレーニング後半に組み込み、低重量×高回数に設定し最後の追い込みとして取り入れるとよいでしょう。
前腕部をメインにトレーニングする場合は高重量を扱っても良いでしょう。ただし、その場合はケガに十分注意して行ってください。
高頻度で鍛えすぎない
高重量同様、高頻度で鍛えるのはあまりオススメしません。
前腕は他の部位のトレーニングでも使われています。そのため、あまり高頻度で鍛えすぎると疲労がとれずにオーバーワークになってしまいます。
疲労がとれず筋緊張が強くなることによって、肘や手首の痛みにつながるリスクも高まるのです。
普段のトレーニング頻度にもよりますが、他の部位同様最低でも1~2日は休息日を作るようにすることをオススメします。
バーベルにつけるだけで前腕を鍛えることができるオススメグッズ「ファットグリップ」
前腕のエクササイズをする時間がない…だけどもっと前腕を鍛えたい!という人は、便利なグッズ「ファットグリップ」を活用してみてはいかがでしょうか。
ファットグリップとはバーベルなどのグリップ部に取り付けて厚みをつけることにより、前腕部の筋肉の動員を多くするというグッズです。
グリップが太くなることによって握りにくくなり、それを保持するために前腕部の筋肉がより使われます。
プル系のエクササイズだけでなくプッシュ系のエクササイズや腕のエクササイズなど、普段のトレーニング全てで活用することができます。
力強いグリップ力がすぐに欲しい場合はギアの使用を検討しよう
どうしてもグリップ力が弱く、デッドリフトやベントオーバーロウがしっかり行えないという場合は、グリップ力を高めるサポートギアの使用を検討してみましょう。
オススメはGOLD’S GYMが販売している「パワーグリッププロ」という商品です。簡単に取り付けることができるうえ、強力なグリップ力を手に入れることができます。
ゲーム感覚で前腕を鍛えるならボルダリングに挑戦してみよう
握力を必要とするスポーツは沢山ありますが、手軽に遊び感覚で行えるのがボルダリングです。
様々な形のグリップを握りながらカラダを持ち上げるため、前腕部には大きな負荷がかかります。
最近は簡単なボルダリングができる壁があるスポーツジムも増えています。筋トレの合間、気分転換にチャレンジしてみましょう。
日頃から前腕部のトレーニングをしている人でも筋肉痛になること必至です。
まとめ
・前腕部を鍛えることは、他の部位のトレーニング効果を高める上でも必要である
・服を着ていてもチラッと見える筋肉質の前腕部は、男らしさを周囲にアピールできる
・前腕部を鍛えて握力が高まれば、日常生活でも疲れにくく活躍する場面が増える
・アスリートにとって前腕は見落としがちな強化ポイント しっかり鍛えることでパフォーマンスも向上する
・前腕部は急がず焦らず、じっくりと鍛えていこう!