エクササイズの知識も増えトレーニングに慣れてきたら、よりいっそう効果を出すために自分なりにトレーニングメニューを考えていくものです。
トレーニングの効果を出すためには、トレーニングの原理・原則を踏まえたうえでメニューを作成する必要があります。今回は中でもトレーニングメニューを作るうえで参考になる「プライオリティ・プリンシプル」について紹介します。
プライオリティ・プリンシプルという考え方
皆さんはトレーニングをする時、どうやってエクササイズの順番を決めているでしょうか。自分好みの種目から順番に…という人は、効果的なメニューが組めていない可能性があります。
プライオリティ・プリンシプルを参考にしてメニューを見直してみましょう。
プライオリティ・プリンシプルとは?
プライオリティ・プリシンプルとは、目的に合わせてトレーニングを組んでいくことをいいます。目的を達成するために重要なエクササイズを選択して順番を決めていくのですが、その順番の決め方には法則があります。
大筋群 → 小筋群
どんな目的であっても、大筋群を刺激するエクササイズから始めるのが一般的です。大筋群に大きな刺激を入れるためには多くのエネルギーが必要ですし、筋肉をしっかり意識したりケガを防ぐために集中してエクササイズを行う必要があるため、心身ともに疲労度が高くなります。
トレーニング中はだんだん疲労していくものなので、大筋群をトレーニング終盤に組み込んでしまうと大きな力を発揮することができなくなり、大筋群に対しての刺激が低下してしまいます。
多関節 → 単関節
エクササイズには二つ以上の関節を動かしながら行う「多関節種目:コンパウンド種目」と、一つの関節しか動かない「単関節種目:アイソレーション種目」があります。
たとえば、下半身を鍛える代表的なエクササイズであるスクワットは、股関節と膝関節・足関節が動く多関節種目ですが、同じく太ももの前を鍛えるレッグエクステンションは膝関節のみ動く単関節種目です。
これも基本的には多関節種目から始め、単関節種目で追い込むというのが一般的です。多関節種目は一つの筋肉ではなく複数の筋肉で動作を行いますので、大きな力が発揮できます。
そのため高重量を扱うことができ、刺激量を増やすことができます。単関節種目は多関節種目よりも発揮する力は小さいですが、鍛えたい部分をピンポイントに刺激することができるというメリットがあります。
その為、まずは多関節種目で大きな力を発揮させて刺激した後に、単関節種目で限界まで追い込むという方法が効果的です。
上半身と下半身
鍛えたい部位によっても最初に行うエクササイズが異なります。
先述の通り、トレーニングの序盤は疲労もなく大きな力を発揮することができます。その為、鍛えたい部分のエクササイズを優先した方が効率は良くなります。
上半身を鍛える日なのであれば、ベンチプレスやチンニングなどの上半身・大筋群・多関節種目を、下半身を鍛える日なのであればスクワットやデッドリフトなどの下半身・大筋群・多関節種目を最初に行うとよいでしょう。
また1回のトレーニングで全身を鍛えたい場合は、上半身・下半身のエクササイズを交互に行うことで、疲労の蓄積を抑えることができ、質の高いトレーニングができるようになります。
プッシュエクササイズとプルエクササイズ
筋肉には主働筋と拮抗筋と呼ばれる筋肉の関係あります。たとえば胸の筋肉が主働筋の場合、背中の筋肉は拮抗筋です。
胸の筋肉が縮めば背中の筋肉は伸びますし、背中の筋肉が縮めば胸の筋肉は伸びます。このように拮抗した筋肉を使ったエクササイズを交互に行う方法があります。
押す動作(プッシュエクササイズ)と引く動作(プルエクササイズ)を交互に行うことで、拮抗筋の作用で筋肉がストレッチされることにより疲労の回復を進めてくれるのです。
パワーエクササイズ → コアエクササイズ → 補助エクササイズ
エクササイズはやり方次第で効果が異なりますが、筋力・瞬発力を高めるためには、一気に全力を出してウエイトを持ち上げるパワーエクササイズが効果的です。そのため、筋力・瞬発力を高めたい場合は最初にパワーエクササイズを行いましょう。
パワーエクササイズとは、オリンピックリフティングとも呼ばれるハイクリーンやスナッチなどの種目です。パワーエクササイズは、高重量を使い一瞬のうちに全力で力を発揮するうえ、技術的にも難しい種目です。そのため疲労していない状態で行うのが効果的です。
パワーエクササイズの次がコアエクササイズです。コアエクササイズと聞くと体幹部のトレーニングをイメージする人がいるかもしれませんが少し異なります。
コアエクササイズとは体幹部の筋肉を動員して行う、大筋群・多関節運動のエクササイズのことを指します。また、コアエクササイズの中で、脊柱に負荷がかかるエクササイズを、「ストラクチュラル(構造的)エクササイズ」と呼ぶことがあります。
たとえば、スクワットはストラクチュアルエクササイズですが、ベンチプレスはベンチに寝て姿勢を固定して行うためストラクチュアルエクササイズではありません。ストラクチュアルエクササイズは動作中に姿勢を安定させる必要があり、体幹部の筋肉が多く動員されるという特徴があります。
最後に行うのが補助エクササイズです。補助エクササイズは、小筋群・単関節種目のエクササイズを指します。追い込んで行う時やケガ後のリハビリなどで筋肉をピンポイントに刺激したい時に行います。
トレーニングメニューの組み方
基本的なプライオリティ・プリンシプルを元に、トレーニングメニューの作成方法を紹介します。
部位の分け方
皆様の中には、1回のトレーニングによって全身を鍛えている人もいるかもしれません。トレーニングに通えるのが週1回くらいという人はそれでも仕方がないですが、そうでない人はトレーニング部位を分けることをオススメします。
1回で全身を鍛えるのは相当ハードです。何よりトレーニング時間が長くなってしまうことで、トレーニング終盤は集中力も下がり質も低下してしまいます。
部位の分け方は
①胸
②背中
③肩
④腕
⑤下半身
と分けることが一般的です。もちろん上級者ともなればもっと細かく筋肉ごとに分けてもいいと思いますが、まずはこの簡単な分け方を基本としてメニューを組んでいくとよいでしょう。
ジムに通える時間にも限りがありますから、人によっては腕・肩をまとめたり、上半身下半身で分けてもいいでしょう。
スプリットルーティーン・ダブルスプリットルーティーン
トレーニングを部位別に分けることを、スプリットルーティーンといいます。
スプリットルーティーンは、どのくらいの頻度でトレーニングを行えるかによって決めることが多いです。
ここでは参考までに、トレーニング実施日別トレーニングメニューの組み方の例を紹介します。
【例】週に2回の場合
①上半身 ②下半身
①プッシュエクササイズ ②プルエクササイズ
【例】週3回の場合
①胸・肩・上腕三頭筋 ②背中・上腕二頭筋 ③下半身
①胸・肩 ②背中 ③下半身・腕
【例】週4回の場合
①胸・上腕三頭筋 ②背中・上腕二頭筋 ③肩・上腕三頭筋 ④下半身・上腕二頭筋
①胸・肩 ②背中 ③下半身 ④腕
初心者でもこのスプリットルーティーンを活用してどんどんジムに行っていただきたいのですが、まだそれほど慣れてないし…という人は週2回くらいのルーティーンを組んでみるとよいでしょう。
ジムにも慣れ頻繁に通えるようであれば、週4回ペースくらい細かく分けてルーティーンを作ってみましょう。
上級者ともなれば1日2回トレーニングを行うハードなスケジュール「ダブルスプリットルーティーン」も検討してみましょう。ダブルスプリットで行うことで、更に部位を細かく分けることができる上、どの部位も疲労が少ない状態でトレーニングに臨めます。
動画はこちら。
より効果を出すためのトレーニングテクニック
ここではプライオリティ・プリンシプルによって決めたメニューの効果をさらに高める、色々なトレーニングのテクニックを紹介していきます。
– コンパウンドセット法
1つの部位に対して2つのエクササイズを連続して行う方法を「コンパウンドセット法」といいます。たとえば大胸筋を鍛えるベンチプレスとダンベルフライ、三角筋を鍛えるショルダープレスとサイドレイズ、大腿四頭筋を鍛えるスクワットとレッグエクステンションなどの組み合わせです。
エクササイズ間に休憩を入れずに連続で行うためトレーニング時間の短縮にもつながり、時間があまりとれない場合でも短時間で筋肉を追い込むことができます。
コンパウンドセットを行う場合、エクササイズを変更できるように手元にバーベルやダンベルを準備し、移動時間がないようにすることがポイントです。
動画はこちら。
– スーパーセット法
コンパウンドセット法と同じように2種目のエクササイズを連続して行う方法ですが、「スーパーセット法」で選択するエクササイズは同一部位の種目ではなく、拮抗した筋肉を刺激する種目を選びます。
たとえば、大胸筋を鍛えるベンチプレスと広背筋を鍛えるベントオーバーロウ、大腿四頭筋を鍛えるレッグエクステンションとハムストリングスを鍛えるレッグカール、上腕三頭筋を鍛えるトライセプスプッシュダウンと上腕二頭筋を鍛えるバーベルカールなどです。
プライオリティ・プリンシプルでも紹介した通り、プッシュエクササイズとプルエクササイズを交互に行うメリットがスーパーセット法でも期待できます。連続して行うことでコンパウンドセット法同様、トレーニング時間の短縮につながります。
ただ、トレーニング部位を分けている場合スーパーセット法は活用しにくいかもしれませんね。トレーニング頻度・時間があまりとれないという人はスーパーセット法を活用してみましょう。
動画はこちら。
– プレエクゾーション法
鍛えたい部位を事前に疲労させてから、メイン種目を行う方法を「プレエクゾーション法(事前疲労法)」といいます。
多関節運動を行う際に、どうしても協働筋として働く小さな筋肉が先に疲労してしまうことがあります。ベンチプレスやチェストプレスで先に上腕三頭筋に利いてしまって動作ができない…。という経験を持っている人もいるのではないでしょうか。そんな場合にプレエクゾーション法を活用しましょう。
先ほどの例の場合、先に大胸筋だけを刺激するバタフライやダンベルフライなど単関節運動を行い、大胸筋を疲労させておきます。その後にベンチプレスやチェストプレスを行うという方法です。
ただ、このプレエクゾーション法は、鍛えたい筋肉を意識しやすいというメリットがある一方で、疲労した状態でメインのエクササイズに入るためどうしても発揮できる力が弱くなってしまうというデメリットもあります。また、あまり疲労させすぎてしまうと、逆に協働筋の方がより強く働いてしまうことも。
もしプレエクゾーション法を使う場合は、軽めに刺激する程度にしておくとよいでしょう。
– フォーストレップ法
「フォーストレップ法」は補助してもらうことにより限界まで筋肉を追い込む方法です。動作を限界まで続けてウエイトが持ち上がらなくなったら、ギリギリ持ち上げられるくらいまで軽く補助してもらいながら動作を続けていきます。
フォーストレップ法では限界後、2~3回の補助が適しています。補助をしている時は、できるだけ本人の力で持ち上げられるように最小限の力で補助することがポイントです。そのためサポートする人の知識や技術も必要になってきます。
サポートがつくことで、心理面でも限界までチャレンジすることができるため、筋肉を追い込むのに効果的です。
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– ネガティブレップ法
筋肉の収縮には、筋肉が縮まりながら力を発揮する「コンセントリック局面(ポジティブレップ)」と筋肉が引き伸ばされながら力を発揮している「エキセントリック局面(ネガティブレップ)」があります。
「ネガティブレップ法」は、動作に限界がきたらエキセントリック局面だけを反復して行う方法です。コンセントリックに比べエキセントリックの方が大きい力を発揮することができます。そのためウエイトを持ち上げることができなくなっても、下すことはできるのです。
この方法もサポートによってコンセントリック局面を一気に持ち上げ、エキセントリックだけ自力で行うという方法で行います。片腕や片脚で動作が行える種目の場合は、使っていない腕や脚でサポートすることもできます。
ネガティブレップ法も強度が高く筋肉痛が起こりやすい方法です。疲労がたまりやすいのであまり多用せず、週1回程度にとどめておきましょう。
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– ドロップセット法
筋肉を追い込む方法として導入しやすいテクニックが「ドロップセット法」です。ドロップセット法は、限界まで動作を続けた後、すぐに重量を落としてまた限界まで動作を続けるのを繰り返して行う方法です。
たとえば、ベンチプレスで60kg×限界まで行ったら今度は50kgに下げ、さらに限界まで行った後、40kg×限界まで動作を続けるなどの方法で行います。
限界を感じても、少し重量を軽くすると意外と動作を続けることができます。非常に強度が高い方法で、こちらも1セット行うだけで筋肉のパンプを感じることができるでしょう。1~3セットを目安に、重量をうまく調整しながら行いましょう。
動画はこちら。
– FST-7
追い込むためのトレーニングテクニックとして「FST-7」も紹介しておきます。
FSTとはFascia Stretch Trainingの略で、日本語で言えば筋膜ストレッチトレーニングとなります。7は7セット行うことを意味しています。
この方法は、ボディビル世界チャンピオンやフィジーク世界チャンピオンなどが取り入れているトレーニング方法として知られています。考案者によると、筋肉を包む膜である“筋膜”を最大限ストレッチさせることで、筋繊維が肥大するためのスペースを作ることができ、筋肥大の効果を高めるとされています。
FST-7は多関節種目が終わったトレーニング終盤の筋肉を追い込む方法として活用します。単関節種目を、同じ重量で1セット8~12レップを7セット行います。セット間のインターバルは30~45秒程度と短めにして血流量を増やし筋肉をパンプさせます。
動画はこちら。
– 5×5法
一般的な10回×3セットではなかなか効果を感じられなくなったという人は、「5×5法」を試してみてはいかがでしょうか。
5×5法は、5レップ×5セットの設定を変えずに負荷を調整して行う方法です。負荷設定の仕方は色々な考え方があるようですが、はじめての5×5法を取り入れる場合は低めの強度設定から行ってみましょう。
1週目 1RMの65% 5レップ×5セット
2週目 1RMの75% 5レップ×5セット
3週目 1RMの85% 5レップ×5セット
4週目 1RMの60% 5レップ×5セット
1RMとは、1回だけ持ち上げられる重量のことをいいます。そのため、まずは自分の1RMを測定する必要がありますが、1RMの測定は一人ではなかなか難しいものがあります。そのため普段行っている重量×回数から1RMを計算してみましょう。(換算表はコチラを参考にしてみてください http://www.geocities.jp/sasuke_spirit/memo/rm2.html)
また、5×5法の負荷設定を1RMを元に計算してくれるサイト(http://gluteus.web.fc2.com/5_5.html)もあるので活用してみましょう。
期間は2~3ヵ月を目安に取り組んでください。5レップ×5セットがきちんとこなせるようであれば、5週目からは少しずつ負荷を高めていきます。1~4週目の負荷バランスを変えずに、全体的に少しずつ増やしていきましょう。
もし、5レップ×5セットできない重量設定の場合は、負荷が重すぎます。重量を減らして行うようにしましょう。
動画もあります。
– 3オン1法
トレーニングスプリットを決める際に参考となるのが「3オン1法」です。
3日トレーニングを行い1日休む、というルーティーンを繰り返し行う方法です。この方法は、ボディビル世界大会で輝かしい成績を残している有名なボディビルダーが取り入れていた方法として有名です。
この方法でトレーニングスケジュールを組むと週に2回ずつ同じ部位を鍛えることとなり、筋肉に対する刺激量は多くなりますが、その反面疲労がたまりやすくハードな方法です。
もちろんすべての人にこの方法が適するわけではありませんが、ボディビルで世界的な有名な選手が取り入れていた方法は参考になるはずです。
まとめ
- トレーニング効果を高めるためにはトレーニング種目の選択が重要
- トレーニング種目を選ぶ際に参考となるプライオリティ・プリンシプル
- 大筋群→小筋群の順に鍛える
- 多関節種目→単関節種目の順に鍛える
- 鍛えたい部位を一番はじめの種目に組む
- 全身を鍛える場合は、上半身と下半身のエクササイズを交互に行う
- 全身を鍛える場合は、プッシュエクササイズとプルエクササイズを交互に行う
- 筋力・瞬発力の向上を目指す場合はパワーエクササイズを一番はじめに行う
- 部位を細かく分けて疲労をためないようにトレーニングしよう
- スプリットルーティーン・ダブルスプリットルーティーンを活用しトレーニングメニューを組み立ててみよう
- さまざまなトレーニングテクニックを駆使し、筋肉を成長させよう