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GI値とは?

雑誌やインターネットで、「GI値」を目にする機会が多くなりました。正式名称:Glycaemic Index(グリセミック指数)を短縮し、GI値と呼んでいます。

GI値は食品を摂取した後、体内で糖に変わり血糖値が上昇するスピードを相対的に数値化したものです。一般的に世の中に広まっている多くのGI値は、ブドウ糖を摂取した時の血糖値上昇率を100として、食物ごとに計算された数値です。数字が高いほど消化吸収が速く血糖値を上昇させ、数字が低いほど消化吸収が遅く血糖値の上昇がゆるやか。というざっくりの理解で問題ありません。

主にダイエットの文脈で「GI値の低い食べ物は脂肪を蓄えにくく、太りにくくし、満腹感が持続しやすい」などと広まっていますが、そのように断言できない部分、根拠もあるのでこの記事で紐解いていきます。

血糖値コントロール・食事療法(食餌療法)でも参考にされるGI値だが、調査方法が実際の食生活と乖離しているなど欠点も理解しておく

インスリンコントロールの一環として血糖値の急上昇を防ぐ目的で、GI値を参考にすることがあります。具体的には、食事療法(食餌療法)でGI値の高い食品を避けるように指導されることがあるようです。

しかし、GI値自体が完全な指標ではないことに留意するべきです。食品を比較する判断軸として一理ありおもしろいのですが、GI値の測定や調査方法、実際は下記の通り、やや強引なところもあります。

考慮しておくべきGI値の欠点

  • GI値を測定する際、一晩絶食した状態で対象の食べ物だけを摂取し測定されていること
  • 摂取時の血糖値上昇曲線の「面積」を数値化したものであり血糖値のピークやどれだけの時間血糖値が上昇するかまでは考慮されていないこと
  • GI値は不安定で、調理方法・脂肪やたんぱく質との食べ合わせ・果実は熟れ具合によっても値が上下すること
  • 高GI値食品であっても、冷やすことにより栄養素が難消化性となりGI値が低くなる食品(例:ジャガイモ)などもあること

参考:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/6259925

GI値を参考に食材を選ぶのはみなさんの自由ですが、GI値のみを健康的な食生活の絶対的指標として信頼し妄信するのはオススメできません。

ダイエットやボディメイクの際に、ある意味カロリー・糖質制限・GI値よりも重要かもしれないワード「グリセミック負荷」

Glycaemic Index(グリセミック指数)に似た言葉として、Glycemic Load(グリセミック負荷)があります。GI値に対しGLと呼んだりします。あまりGL値とは呼ばないようですが、GI値に対して本記事内では以降GL値と記述します。

GL値はそれぞれの食べ物のGI値に1食分の炭水化物の重量をかけた値で、1食当たり実際にどの程度血糖値を上昇させるかを表しています。ハーバード大学公衆衛生学大学院のチームにより研究考案された指標です。

基本的に炭水化物の含有量が少ない食品はGL値が低く、精製された穀物やジャガイモなど炭水化物量が多くGI値が高い食品ほどGL値は高くなります。炭水化物の多い食品では全粒穀物が低いです。

GI値だけでなく、1食あたりの炭水化物量からGL値を算出してコントロールできるとワンランク上

体内に入れる食品を選ぶのであれば、単なるGI値のみで比較することは意味がありません。現実的に各食べ物の1食分に含まれる炭水化物の量とGI値を掛け合わせたGL値も見るべきです。

実際の例として、ハーバード大学医学大学院がリスト化している100以上の食品のGI値・GL値リストを参考に、リンゴ1個120g(GI値36)・バナナ1本120g(GI値48)・レーズン60g(GI値64)を比較してみましょう。

  • リンゴ :120g*12%*36% = 5
  • バナナ :120g*19%*48% = 11
  • レーズン:60g*72%*64% = 28

※1食分の量炭水化物比率(食品1gに対する糖質の量%)GI値(%) = GL値 として求められます。厳密に言えば、ハーバード大学医学大学院の表に炭水化物比率は掲載されておらずGL値から逆算しています。

参考:https://www.health.harvard.edu/diseases-and-conditions/glycemic-index-and-glycemic-load-for-100-foods

上記の3食品の例では、単なるGI値で比較した場合よりもGL値で比較した場合の方が差が大きくなっていますね。本当はここまで突き詰めるべきです。

日本人の女性18-20歳、約4,000人の調査結果で、高GLの食生活が肥満につながることが判明

食事による血糖値上昇≒グリセミック負荷の大きさが、どのように体型に影響を及ぼすかを調査したデータと論文があります。

グリセミック負荷が低い食生活をしていた人ほど、肥満度をあらわすBMIが小さいという正の相関が出ています。逆に言えばGI値の高い食品をたくさん食べるグリセミック負荷が大きい状況では、肥満になりやすい、ということです。

また、同じ調査で白米がグリセミック負荷を上げる主要な因子であったこともわかっています。白米はGI値が高く、日本人の主食として摂取量が多い炭水化物のため結果的にグリセミック負荷を上げる影響が大きいのでしょう。

参考:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17251928

GI値・GL値が高い or 低い食品は?

インターネット上でGI値について検索すると、さまざまな一覧表が見つかります。ただし、厳密にまったく同じ食べ物というものは存在せず産地・調理方法によってもGI値は上下します。かなり精密に調査され表にまとめられたものもありますが、750行羅列されておりちょっと見る程度には難儀します。
参考:http://ajcn.nutrition.org/content/76/1/5/T1.expansion.html

食品別GI値・GL値一覧表

ハーバード大学医科大学院が2015年に発表している、 Glycemic index and glycemic load for 100+ foods を紹介します。ベーシックな食品はだいたい掲載されており、先ほどの表よりはこちらの方が皆さんにとって使いやすいでしょう。
参考:https://www.health.harvard.edu/diseases-and-conditions/glycemic-index-and-glycemic-load-for-100-foods
※英語で記載されたぺージのため、適宜ブラウザの日本語翻訳機能を使うなどして見てください。

任意の食べ物でGI値・GL値を検索したい場合はシドニー大学のSerch for the Glycemic Indexが便利です。Food Nameの箇所に英語で食べ物を入力すると簡単に検索できます。

参考:http://www.glycemicindex.com/

GI値・GL値の低い食べ物をチョイスする工夫

毎回の食事でGI値を細かく気にするのも疲れてしまいますし、食事自体が楽しくなくなってしまいます。そんな人にも頭の片隅に置いておける原則やレシピをいくつか紹介します。

※繰り返しますが、GI値が万能な指標ではない、という前提で参考にしていただければうれしく思います。

炭水化物を食べるとき、白いものを避ける

  • 白米を玄米やおかゆに変える
  • うどんをそばに変える
  • 食パンを全粒粉パンに変える

このシンプルな指針は理にかなっており、ダイエットビギナーでも続けやすい工夫のひとつです。とくに毎日忙しいビジネスマンはどうしても外食が多くなりがちで毎回の食事メニューの自由度がありませんよね。そんなときにこの法則を頭に入れておけば、少しはマシな選択ができるかもしれません。

GI値・GL値が低い食べ物を美味しく食べるレシピ

cookpadで、「低GI」などと検索すれば、参考になるレシピがいくつも見つかります。筆者が好んで食べているレシピに近いものをいくつか補足付きで紹介します。

①トマトベースの鶏肉・野菜の具だくさんスープ

低GI★4seasonsトマトスープ
※補足:上記のレシピの鶏肉は、皮を捨てて身だけで作るとより低脂質なレシピに。また、スープは塩分が高くなりがちですが、野菜の量を増やしてかさを増すことにより自然な味を楽しみつつ塩分を控えるという工夫もできます。

②玄米+お肉のタコライス

低GIレシピ☆玄米のタコライス
※補足:上記のレシピを豚ひき肉→鶏むね肉のそぼろに、ケチャップ→サルサソース、ピザチーズ→カッテージチーズ とそれぞれ置き換えることで、低GI、より高タンパク、より低脂質、さらに塩分を抑えたストイックなレシピになります。

低脂質の食事や、低糖質、低GIの食事を追求していくとどうしても味が質素になりがちです。なるべく美味しくなるようにと食べ方工夫するとどうしても濃い味付け・塩分が欲しくなってしまいますが、塩分過剰摂取は高血圧・腎機能へのリスクが高まりますのでご注意ください。

前述のレシピで補足したケチャップ→サルサソースの部分に関しては、カゴメ株式会社の公式ホームページにある製品情報「カゴメ サルサ」および「カゴメ トマトケチャップ」を見ると、100g当たりの食塩相当量がそれぞれ0.7g、3.6gとなっています。味は少し変わってしまいますが、サルサソースでも十分合いそうです。同じ量を使うならば実に80%オフの減塩効果があります。

コンビニでも買える、間食にオススメの食べ物は?

間食もまた、GI値だけで見て食べ物を選ぶのは危険です。GL値が高いものや、低GIでも高脂質・塩分が多い食べ物も並んでいますので注意してください。様々な観点から、多くのコンビニ・スーパーで買える間食の一例を書いておきます。

干し芋

※原料のサツマイモがGI値55、炭水化物比率が高くGL値も高めですが、ほぼゼロの低脂質で食物繊維豊富なので食べ過ぎなければ間食として悪くないです。特にもともと甘党の方、砂糖の味、スイーツが大好物な人が食生活を見直す第一歩としてオススメです。甘いものを断つ際にまずは干し芋に慣れていくと重宝します。

バナナ

※こちらもGI値55と低いわけではないですが、安価で手に入りやすいこと、脂質がほぼゼロで満腹指数が高くしっかり食べた気になれるのもいいことです。果糖も可食部当たり2.5%と神経質に気にしなくてもいいレベルです。

グレープフルーツ

※GI値31と低いです。置いていないコンビニもあるかもしれませんが、味もサッパリで酸味があるので食べ過ぎが防げるでしょう。

※以前、オススメの間食として果物のりんごを挙げていましたが摂取量が多くなりがちだったり、果糖量が比較的に多いため除外しました。果糖はGI値が低いのですが中性脂肪に変換されやすいため採りすぎには注意が必要です。

サラダチキン

※低糖質・低脂質でたんぱく質が豊富。GI値45・GL値は炭水化物がほぼないため0。食べ応えがしっかりあるので空腹は紛れやすい。コンビニによって複数の味がリリースされているので飽きにくいが、塩分が1個当たり2g前後と少々高いので食べ過ぎには注意したいですね。

高負荷なトレーニング直後の炭水化物補給とGI値をどう考えるか?

ここまで丁寧に読んでいただいた読者の方には伝わっていると思いますが、GI値が高い食品=絶対食べない方がいい、ということではありません。血糖値上昇・消化が速い高GI値の食品が活躍するタイミングもあります。特に、トレーニング直後に枯渇した筋肉のグリコーゲンを補充し、筋肉の再合成を促すために有効です。

高GI値食品で、トレーニング直後の炭水化物補給を

グリコーゲンは主に肝臓・筋肉に蓄えられているエネルギーで貯蔵が可能ですが、運動後、とりわけ高強度なトレーニング後に大きく消費されます。60-90分の高強度な運動で、筋肉中のグリコーゲンは60-75%枯渇します。

トレーニング後、何時間以内にプロテインや炭水化物を補給すべきか?という議論にはまだ強い根拠での答えは出ていませんが、筋肉の回復のため重要なのはグリコーゲンの枯渇を補うためのエネルギー摂取はいずれにせよ必要ある、ということです。ベストタイミングはまだ研究中ですが、なるべく早くこれらの栄養素を補給するに越したことはないでしょう。

スピード感あるグリコーゲン補給のためには、炭水化物が多く含有しながらも比較的GI値の低い果物よりも、高GIの炭水化物で余計な脂質が入っていない、例えるならマルトデキストリン(粉飴)・市販で手に入る炭水化物で補うのであればグミなどもいいでしょう。やや高価ですがクラスターデキストリンが補給できるなら尚良しです。

炭水化物を極力カットしないといけない場合、クリーンなアミノ酸(たんぱく質を消化したもの)補給手段としてBCAAを使う

減量期など炭水化物量を極力抑制したい場合においては、BCAAの補給も有効です。プロテインには少量の糖質が含まれていることもあり、それを避ける目的があります。

※BCAAとはBranched Chain Amino Acids(分岐鎖アミノ酸)の略で、ロイシン、イソロイシン、バリンの3つのアミノ酸を含む名称です。サプリメントと同様に販売されており、Amazonで簡単に入手できます。

参考:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9694422
参考:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/3758035
参考:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17609259
参考:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24066806
参考:http://ajpendo.physiology.org/content/281/2/E365.short
参考:http://europepmc.org/abstract/med/10211856

GI値・GL値についてのまとめ

  • GI値は食べ物を摂取してから血糖値の上昇度合いを相対的に比較する指標である。欠点もある。
  • GL値は食べ物1食分の炭水化物量*GI値をかけたもの。GL値が高い食生活と肥満度の高さは一定の相関性があるというデータが過去に出ている。
  • 高負荷トレーニング後、グリコーゲンが枯渇している状態ではGI値の高い食品が活躍する
  • GI値やGL値は食べ物を選ぶ際の絶対的な判断基準ではない。すべての食べ物には特有の栄養成分があり、様々な視点からレシピや食べるものを選択していくことが重要。

参考文献

International table of glycemic index and glycemic load values: 20021,2

Kaye Foster-Powell, Susanna HA Holt, and Janette C Brand-Miller
http://ajcn.nutrition.org/content/76/1/5.full

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9694422
※まとめ中

リスペクトしている記事

https://athletebody.jp/2016/07/27/glycemic-index/

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training-holic
training-holic
ボディメイク・栄養学を必修の学問として国内に広めることを決意して#トレラブを発起した人。米国パーソナルトレーナー資格のNSCA-CPT合格。2019年にはJBBFメンズフィジーク初挑戦で地方大会3位入賞。2020年には恵比寿・代官山エリアのパーソナル+24時間通い放題のジムを共同創業者としてオープンした。好物は低温調理器で大量に仕込む鶏ハムをいろんな味で食べること。

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